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硬い寝床


蜂

 衣替えもほぼ終わり、布団も厚手のものに変えた。風呂上りにお茶を飲んだ後、布団にもぐり込むと幸せだ。ヨーロッパを旅行していた時に誰かが「ベッドは世界で一番平和な場所」と言っていたが、そうかもしれない。またそうでない人たちにも早くそうなるよう祈りたい。


タワー

 アジアに比べあまりにもうまくいきすぎるヨーロッパの旅は退屈だった。といっても電車が時刻通りに到着したり、値札が付いている商品をもめずに買えるというのは日本やヨーロッパからしたら当り前のことだが、アジアからしたら異常(言い過ぎかもしれない)だ。その異常に慣れてしまい、すっかり刺激の無くなった旅に活を入れようとブダペストからはパリに向かってヒッチハイクをした。
 当然ながらすんなりA地点からB地点にたどり着けるわけでもなく、田圃のあぜ道や高速の途中で降ろされ野宿する羽目になることはしばしばあった。それでも心の奥で何かが燃え始めているようで楽しかった。
 「浮浪者は3日間やったら止められない、旅を続けたいなら3日間でやめろ」というのが僕のヒッチハイクの先生の言葉だ。
 「大丈夫だって」と高をくくっていたが、3日目の朝から異変は起こった。
 最初は緊張して、うつむきがちだったが、だんだんと慣れてきて、急に視界が広がるようになる。地べたからの視界だ。普段見ることのできないアングルから見ると通行人や建物、街の様々なことが違って見えたり、何かがわかったような気になる。周りからは石ころのようにしか見られないため、自分の存在が段々と透明になっていく。時間も止まったようだ。プライべートな境界が希薄になり、町そのものが居間のように心地よくなる。夜、硬い地面に寝そべり暗闇を見つめるとどんどん奥に入っていくようだ。たくさんの何かが細かくうごめいている。何かがずるずると僕の体を引っ張るのだ。
 「ハッ」として目を覚ますと4日目の朝だった。眠い。もっとここで眠ることはできる。だが何かが僕を駆り立てて逃げるようにその仮のねぐらを去った。
 本当は芸術の都・パリまでヒッチハイクで突き進み、カッコよく入場したかった。だが、間際でそれはできなかった。それでよかったのか、あるいは負けだったのか。僕は電車に乗り込み、進行方向であるパリに背を向けて座った。なぜか涙が出た。



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