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黄金なる山頂


鷹巣山

暖かな西陽に照らされた山頂

 山の北側からアプローチしたため、人知れぬ東京の初雪が残っていた。曇り空だが空気がクリアで、背後に広がる奥多摩の峰が遠くまで見渡せる。しかし急な斜面を登って来たため来た道のりを見下ろすと足がすくむ。さすがに頂上付近になると風が冷たい。じっとしている訳にもいかずゆっくりながらも頂上を目指しのしのし登って行った。
 先輩の声で空を見上げるとそびえ立つ木々以外にもう高いものは何も無い。頂上をとらえた。木の根の隙間に残った雪をじゃくじゃく踏みしめ、それでもゆっくりと登る。
 「急がなくていい、確実に行け」後方から先輩の声援が聞こえる。


山頂の西陽

黄金に輝く黄昏時に頂上に辿り着いた

 「急げよ!」以前のオフィスの同僚は何かと指示や用件の後にこの言葉をつける。急ぎの案件にも、余裕の案件にも、食事に行く時にでもすべて語尾に「急げよ!」とつける。確かにコストが発生している仕事の世界ではスピードが問われる世界だと思う。ただすべての事柄に対してつけられる「急げよ!」はもうその言葉の意味をなしていない。それは病気だ。「急げよ!」というサウンドを聞くと今でも胸が締め付けられる。

 「ゆっくりでいいぞ、もう手が届いているからな、確実に行け」後方から先輩の声援が聞こえる。疲れきった身体に再び力を振り絞りもう一歩、もう一歩と踏み出した。
 最後の茂みを突っ切るといきなり黄金の世界が広がった。美しい稜線が南斜面から果てしなく広がる。ついさっきまでの対照的な色彩と世界に面食らった。あらゆる方向からの突風が肌を冷たく刺すが、それでも夢の世界にいるのではないかと思った。その先に富士山が見える。美しい山だ。見上げると空に遮るものは何も無い。黄金に輝く黄昏時に頂上に辿り着いた。鼻水を出しながら幸せだと思った。


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