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空気、大好きです…


Round Sign

冬の聖都へ向かう

 チベットに向かったのは冬も近付いて来ている10月(2000年)の終わりごろだった。聖都ラサへ向かう陸路の最後の拠点・ゴルムドそれほど標高の高い所ではなかったが、木枯らしに時折雪が混じって寒かった。これから標高5000mを超える峠を2つも越えなくてはラサへは辿り着けない。更に過酷になるだろう寒さと、もしかしたら発病するかもしれない未知なる高山病におののきながらおんぼろバスに乗り込んだ。
 決して快調とは言えなかったが、バスはなんとか十数時間走り続けた。しかし、とうとうと言うべきか、バスは失速し、遂に止まった。結構ひどい故障らしく、すぐに発進する見込みはなさそうなので、一度バスから降りて、外の空気を吸いに出た。


Sunday Park

美しく残酷な死の世界

 それはよく晴れた午後で、空は黒いほど青い。見上げても本当にこれ以上高いものは何も無いのだ。と耽っているのもつかの間、あまりの寒さにすぐに車中に引き返した。おんぼろバスに暖房設備などあるはずも無く、車内は数十人の体温とため息でもわ~っと暖められていた。ほっとしたのもつかの間、あまりの息苦しさにすぐに車外へ飛び出した。そして再び車内へ、また車外へと何回も繰り返すうちに気がついた。空気が薄いのだ。外に出ても深呼吸ができず、車内も酸欠状態。旅行メンバーの一人は激しい頭痛と吐き気を訴えている。高山病の症状が出始めている。たまたま持っていた高山病の特効薬(中国産のいかにも胡散臭い精力剤のようなやつ)を差し渡したが、効果は現れなかったようだ。
 外はこんなに晴れて、日差しも強い。なのに空気が薄く、音の無い、それはそれは残酷な死の世界の入り口だった。いかん意識がもうろうとして来た。空気、大好きです…。カク…。
 数時間経った夕暮れ前にようやくバスの修理が完了し、再びラサへ向かって走り出した。車内の全員がぐったりと沈む太陽を眺めていた。数十メートル走ったところに記念石碑が経っていた。「えっ!?五千…!?」
 標高五千なんとかメートル…太陽を背に暗くなった石碑は遠くに過ぎ去って行った。



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