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The Grand Bar

the grand bar

 「The Grand Bar」次に訪れた時は建物ごとなくなっていた。砂利だけになった一画を見つめながら、しばらく立ちつくしていた。夢かと思って、近所をもう一周して、今まで通りの道順でトライしてみたが、結果は同じだった。
 大阪に住んでいた頃、淀川河川敷のごく近くにある「The Grand Bar」というJazz Barを見つけた。外観が気になっていつかは入りたいなと店の前から店内を覗いていたら、いきなりドアが開き、「入んな」とマスターに誘われた。正直マズイなと思った。断れずに入ってしまったので、いろいろ覚悟を決めた。
 寝間着姿で柔道世界選手権を見ていたマスターはバーボンを僕に出すと再びテレビ画面を見つめながら「お前は勇気のある奴だ。大人になっても冒険している遊び人や」と言った。「ふつう入らんで」とも言った。
 「ここJazz Bar…ですよね…」「そうや」「Jazzは…」「待て、この試合済んでからや」
 試合終了後、マスターはため息をついてやっと音楽を店内に流した。実にリアルで、クリアーでパワフルなナンバーが流れた。しゃがれた女性ボーカルの声が美しい。
 「いいですね…」「ここでやったライブのテープや」「!」
 正直驚いた。かなり辺鄙な町で、かなり(失礼だが)くたびれた店内でこんなライブが行われているなんて。
 「次は今週の土曜日や、必ずお出でや」「はぁ…」
 その週末、再び「The Grand Bar」へ足を運んだ。スーツ姿で、実にジェントルでテンダーなマスターが立っていた。
 「よう、来たな」「…」「ライブのときはこれや、昨日は休みや」
 とジャケットをつまみながら笑って言った。
 すぐに演奏は始った。ああ、なんて濃~い空気なんだ。すごくプレーヤーと近いし。久しぶりに自分の勘が当たったというか、運がよかったというか、実にいいバーを見つけて幸せに浸りながらJazzを聞いた。
 「The Grand Bar」どこへ行ったのだろう。



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